真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ

プルースト

海外で住むということ

ふと考えると、僕の友達には海外で暮らしていたり、海外で生まれた人が多い(もちろん、そうでない人のほうが数は多いのだけど)。そういう人は男女を問わず魅力的な傾向にある。彼ら/彼女らがどこかストレンジャー(異邦人)の影を背負っている用に感じるからかもしれない。

10代の時に異国で生きるということは、(それをやったことがない人の)想像を越えてハードな側面がある。慣れ親しんだコミュニティはないし、誰も何をも教えてくれない。ただでさえ、固く凍結した地面の上を歩くように、転びやすく進みにくい年齢なのだ。必然的に「どうやら人生というのは、一人で生きていかなければならないものである」というようなことを学ばざるをえない。

孤独の経験

そういう経験は、ある種の孤独さを人に焼き付ける。チャレンジをしないと知り合いもできない。友達をつくるのは更に難しい。ひとりきりになってしまう時もある。誰にも理解されないかもしれない。

オズの魔法使いでもこういうセリフが合った。”There’s no place like home” 一方、ハンフリー・ボガートのセリフは “We’ll always have paris” だ。彼くらいタフでなくてはいけない。

イギリスにいた事

僕は17歳の時、いろいろあってイギリスで語学学校に行くことになった。冬のイギリスは、兎にも角にも鬱陶しいほど暗い。食べ物はまずい。

僕のいたケンブリッジという街は、勉強するためにはとんでもなく良い街だけど、それ以外のことをするには何一つ向いていないという極端な一点突破型の都市だった。
同じクラスの生徒が、「弟はカリフォルニアに行っているのになぜ俺はケンブリッジなんだ」と一日に7回くらいぼやいていたのを覚えている。勉強は捗ったのでよかったのだけど。

まぁともかく、英国人ではなく、英語が(ほとんど)しゃべれない中で数ヶ月間生き、そこで何かしらの関係性を作っていかなくてはいけない、というのはその後の僕の人生にも多大なる影響を与えた。

本屋の思い出

今でも覚えていることがある。書店で本を買った時のことだ。簡単に読めそうな本を探していた時、その本を手にとった。その本には 40% の割引がかかっていた。
ところが、イギリス人の無愛想な店員(基本的にイギリス人は一見無愛想に見えるのだけど)は、レジに行くなり正規の料金を請求してきた。無愛想なイギリス人相手に、英語で説明する自身がなかった僕は、そのまま黙って料金を払ってしまった。

でも、本屋を出たところで、「もしかするとこれは凄く大きなポイントかもしれない」と直感的に感じた。「これをこのままにしておいてはいけない」という内なる声が大きくなってきた。

大げさな感覚だったかもしれない。でも、僕はよそ者だ。誰かが親戚のおばさんみたいに親切に助けに来てくれるわけではない。僕はそのコミュニティの中に属しているわけではない。自分の責任で物事を引き受けなくてはいけない。僕はシステムに立ち向かわなくてはいけない側なのだ、と。

その本屋に戻っていくのはとても大変だった。相当な勇気がいった。なにせ英語でどう説明していいかわからないのだ。頭のなかで何度も予行演習をして、足が震えながらもう一度レジに並んだ。
結局、レシートを見せて一言言おうとするとすぐに返金された。多分店員もわかっていたのだと思う。ようは、舐められていたのだ。その頃はまだアジア人に対してそういう雰囲気があった。

そのあと、街を歩きながら感じたことは今でも忘れていない。ともかく、僕はよそ者として立ち向かった。それは一つの達成だった。人生においては歓迎されることばかりではない。でも自由であることは出来る。

それからずっと、自分がストレンジャーであるという気持ちを引きずりながら生きていた。その気持は日本にいてもそれほど変わっていない。システムやコミュニティに守られているようで、どこか自分には疎外感がある。

よそ者として生きる

多分、そういう気持ちは少なからず人生の選択にも影響している。

僕は多分これからもよそ者として生きていく。そして、多分よそ者たちとつるむだろう。「フルハウス」ではない。「七人の侍」や「荒野のガンマン」みたいに。

彼らが持っている寂しさの影というのは、だいたい僕には分かる。銃を出さなくてもガンマンがお互いを認識できるように。そこにはいろんな辛い経験や思い出がありつつも、前を向いている強いダイナミズムがある。

親切を期待することはない。自分の足で歩いて行かなくてはいけない。一生涯孤独さを背負っていかなくてはいけない。

そうして、夕日に再び別れるのだ。

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